自己破産や個人再生など、裁判所を利用した借金の整理手続を利用する場合、原則として全ての債権が支払免除や減額の対象となるため、抵当権などによって担保されている債権がある場合、ほぼ例外なく担保が実行されてしまい、担保に入れられている建物を失うことになってしまいます。
とはいえ、そもそも借金の整理は債務者の生活を再建するために行う手続なのに、住む家がなくなってしまっては本末転倒で、生活の再建にも支障が生じてしまいます。そこで、いわゆる住宅ローンと住宅ローンの担保に入っている建物や土地だけは特別扱いして、住宅ローンについてはそれまでどおりの支払いを続けられるようにし、住宅を残すことができる手続ができました。
それが、住宅資金特別条項付個人再生です。
住宅資金特別条項付個人再生は、簡単に言えば、
1.住宅ローン以外の負債について、以下の(A)か(B)、どちらか高い方の金額を、原則として36回の分割払いで問題なく支払いきれる見通しが立つことを条件として、
2.住宅ローン以外の負債を、以下の(A)か(B)、どちらか高い方の金額まで減額し、かつ分割払いにすることを決定する裁判所の手続です。
(A) 再生手続を申し立てる方が所有している資産の総額
(B) 住宅ローン以外の負債を、負債の総額に応じて、以下の条件で減額した後の金額
0〜100万円:減額無し
100万円〜500万円:100万円に減額
500万円〜1500万円:1/5に減額(=8割カット)
1500万円〜3000万円:300万円に減額
3000万円〜5000万円:1/10に減額(=9割カット)
※住宅ローンを除く負債総額が5000万円を超える場合は個人再生手続は利用できません
つまり、住宅資金特別条項付個人再生が裁判所で認められた場合、最終的には、上記の(A)か(B)いずれか高い方の金額を36回で割った金額と住宅ローンの支払いを毎月続ければ、3年後には住宅ローン以外の負債を完済することができるわけです。
○ 具体例
毎月の住宅ローンの支払いが10万円で、住宅ローン以外の負債が総額500万円、その毎月の支払いが8万円になっている方の場合(所有している資産の総額が108万円の場合)。
↓
住宅ローン以外の負債が500万円の場合、上の(B)で計算すると100万円。(A)の金額は108万円ですから、この場合は高い方の108万円を36回で返済していくことになりますので、裁判所で個人再生が認められた場合、毎月あたり3万円の支払となり、この金額と住宅ローンを毎月支払っていけば良いことになります。
つまり、住宅ローン以外の負債の毎月の支払いが5万円も減ることになりますので、かなり返済は楽になるのではないかと考えられます。
○ 資産とは
現金、預貯金、保険の解約返戻金、不動産(不動産が担保に入っている場合は、担保されている借金の残高を不動産の評価額から差し引いた額が資産として計算されます)、自動車、貸付金、債券や株式・会員権等の有価証券、骨董品や宝石貴金属・高価な家具や電化製品等の動産、退職金(おおよそ個人再生を申し立てた時点で退職したとしたら支払われる退職金について、退職日が近い場合は1/4、遠い場合は1/8の金額が試算として計算されます)など。
■ 再生手続を申し立てる方が所有している建物であること
■ 再生手続を申し立てる 方自身が住むことに使用するための建物であること
■ 店舗や事務所部分がある場合、店舗や事務所部分の床面積が全体の1/2未満であること
■ 住宅の建設や購入・リフォームに必要となった借り入れ(=住宅資金貸付債権)であること
■ 住宅が、住宅資金貸付債権以外の債権の担保となっていないこと
■ 共同担保がある場合、共同担保になっている物件も住宅資金貸付債権以外の債権の担保となっていないこと
■ 住宅ローンの弁済ができなくなり、保証会社が保証債務を履行してしまっている場合
→再生手続開始の申立てが保証債務の履行の日から6ヶ月を経過する前になされていること
■ 再生計画で決められた毎月の弁済を継続できる定期的な収入があること
■ 個人事業主の方の場合、確定申告を行っていること
■ 国民健康保険料や税金の滞納がある場合、行政機関と支払いについての話し合いが済んでいること
※ 住宅ローン以外の債権については減額の対象となるため担保が実行されることになります
→保証人が付いている場合は保証人に請求が行くことになります
※ 個人再生手続を開始するとブラックリストに載ります
→新たにクレジットカードを作ったり、借り入れをしたりすることはできなくなります
■ 給与所得者個人再生での毎月の弁済額は可処分所得で決まる
→可処分所得は高めに出る傾向があり、小規模個人再生よりも毎月の弁済額が高額になりやすい
■ 小規模個人再生の場合、
債権者の過半数が再生計画に賛成+反対している債権者の債権額が総債権額の半額未満である必要
→反対する債権者が過半数or反対する債権者の債権額が半額以上の場合、再生計画は認可されません
→給与所得者個人再生では債権者の賛否は問いません。
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