海外の銀行預金口座は差押えできるか

海外の銀行の海外の口座の差押えは可能でしょうか。

最近はインターネットが発達し、容易に世界の情報が入手できるようになった上、国際化が進んで海外に在住する人も増えていますので、海外の銀行に口座を開設する日本の方も増えており、その口座を差し押さえられないかという相談も見受けられるようになりました。

例えば、あなたが誰かにお金をダマし取られたとしましょう。そのお金を取り戻すには、まずダマされたお金の返還を求める訴訟(損害賠償請求訴訟)を裁判所に起こして、勝訴判決を得なければなりません。

その訴えを起こす裁判所が日本の裁判所になるか、海外の裁判所になるかは、普通は訴える相手方の住所がどこにあるかによります。相手方が日本に住んでいれば日本の裁判所、海外に住んでいれば海外の裁判所です。ただ、相手方が海外に住んでいても、例えば上の例の詐欺のような不法行為の場合は、不法行為が行われた場所にも管轄が認められますので、相手方が海外に住んでいても日本の裁判所に訴えを起こすことができます(詐欺行為が日本で行われ、詐欺をした相手方が提訴時に海外に住んでいる場合は、海外送達などの方法で相手方に訴状を届けることになります)。

次に、銀行口座を差し押さえるには、判決を使って強制執行の手続をしなければなりません。強制執行というのは無理やりお金を取っていく手続ですから、公権力による強制権限の行使です。従って、日本の判決では、原則として日本にある財産にしか強制執行はできません。日本以外の国にある財産に強制執行しようとしても、日本以外の国で日本の裁判所が強制力を行使することはできないので、差押えはできないのです。

銀行口座を差し押さえる場合、最終的には差し押さえた口座のある銀行窓口に行って払戻しを受ける必要があります。日本国外の銀行は、日本の裁判所が出した強制執行命令に従う必要が無いので、日本の裁判所が出した書類を持って行っても無視されるだけということです。

日本と相互協定を結んでいる国であれば、日本の裁判所が出した判決に、その国の裁判所で改めて執行文をもらうことで強制執行をすることができます。反対に、そのような国であれば、その国の判決を使って、日本の裁判所で執行文をもらって、日本の財産に執行することもできます。アメリカなどがそうです。相互協定を結んでいる国であれば、執行手続だけ国外の裁判所を利用すれば良いということになります。

しかし、例えば中国などの国の場合は相互協定がなく、日本の裁判所が出した判決は通用しません。従って、このような国にある預金口座などの財産に強制執行をするには、提訴の段階から中国の裁判所で手続を進める必要があります。

日本の弁護士には中国の裁判所での代理権はありませんので、中国で訴訟をするには、中国の弁護士(律師)に依頼するか、本人で訴える必要があります。裁判は全て中国語で行われますから、日本語の資料は全て中国語に翻訳しなければなりません。適用される法律は当然ながら中国法です。翻訳や中国までの往復旅費、律師に依頼した場合は律師の報酬など多額の費用が掛かることになります。

また、上で出てきた海外送達(日本国外にいる相手に訴状を届ける手続)や、日本の裁判所の判決を使用して執行手続を海外の裁判所で行う場合も、翻訳費用等が必要になりますし、このような手続に精通している日本の弁護士は必ずしも多くありません。

以上のように、海外の口座を差し押さえるのは、実際のところ極めてハードルが高いです。もし海外の口座を差し押さえを検討する場合は、慎重な検討が必要ということになります。