自己破産と財産の処分(預貯金と自動車)について
自己破産を行う場合、所有している財産を処分しなければならないのではないかと不安に考えられる方も多いのではないかと思います。本日は財産のうち預貯金と自動車の処分について解説いたします。
まず、預貯金については、普通預貯金は原則として99万円までは手元に残せますので(これを自由財産と言います)、原則として処分する必要はありません。ただ、その預貯金が腕時計を売却したお金だとか、保険を解約したお金だとか、退職金だとか、自動車を売却したお金だとかいったように、何かを現金化したお金である場合は、現金化する前のものと同じものとして扱われてしまい、処分が必要になる場合があります。また、借金の合計が130万円なのに、99万円の預貯金がある場合などは、そもそも借金を返せるので破産状態ではないのでは、ということで破産が通らない場合もあります。
これと異なり、定期預金・定額預金は一定以上の金額の場合、原則として処分する必要があります。従って、定期預金・定額預金はできるだけない方がいいでしょう。一定の金額がいくらかは裁判所によって異なりますが、10~30万円以上の場合が多いように見受けられます。
預貯金が誰の預貯金かは基本的に名義人によって判断しますので、ご両親が知らないうちにご本人名義で勝手に預貯金を作っていた、という場合でも原則としてご本人の預貯金として取り扱われます。
預貯金でもう一つ注意しなければならないのはローンなどの借り入れを行っている銀行による口座凍結です。弁護士から受任通知が届くと銀行は口座を凍結してその時点での口座残高を自行の借金返済に充て、利用をできなくしてしまいます。4ヶ月前後で口座凍結は解除されますが、その期間原則として口座の利用が全くできなくなりますので、各種利用料の引き落とし口座や給与の振込先の変更などが必要になります。
自動車は、ローンを組んで購入していてまだローン完済前の場合やリース車両の場合は、破産手続きの開始により、ローン会社・リース会社に返却する必要があります。ただ、銀行系のローンで自動車の所有者が金融機関やディーラーではなくご本人名義となっている場合は、返却が不要な場合があります。
もっとも、自動車も一定の年式より新しいもので、かつ一定以上の価値があるものは処分の対象になりますので、債権者への返却が不要でもこの条件に当てはまる場合はどちらにしても処分が必要となります。まとめますと、自動車で手元に残せるのは自分の名義(もしくはローン完済済みで名義変更をしていないだけ)の自動車でかつ一定の年式より古いか、一定の年式より新しくても一定以下の価値しかない場合ということになります。一定の年式がどれぐらいかも裁判所によって異なりますが、7年以上といする場合が多いように見受けられます。但し、高級車やプレミアの付いているものなど特殊な自動車についてはこの限りではありません。
自動車ローンに連帯保証人がついている場合、連帯保証人が支払いを継続するという条件で自動車をそのままにできたというような場合もありますが、この取り扱いが可能かどうかは債権者によって異なります。
財産の処分が必要か、手元に残せるかどうかは微妙な判断が必要な場合もございますので、詳細は専門家にご相談ください。


